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Prosopocoilus dissimilis elegans (Inahara,1958)
和名:トカラノコギリクワガタ
トカラ列島=吐噶喇列島とは?
吐噶喇列島(とかられっとう)は、南西諸島(※1)のうち、
鹿児島県側の薩南諸島(※2)に属する島嶼(※3)群です。
すべての島で鹿児島県鹿児島郡十島村の行政区域をなしています。
天気予報区分では奄美地方の一部としているようです。
漢字表記が難しいことや「噶」がJIS X 0208に収録されていないため、
カタカナで『トカラ列島』と表記されることが多いそうです。

※1 南西諸島(なんせいしょとう)
   九州の南方から台湾の東方にかけて点在する諸島の総称。
   北から南へ、大隅諸島、トカラ列島、奄美群島、
   沖縄諸島、宮古列島、八重山列島、尖閣諸島と連なり、
   少し離れて大東諸島があります。
※2 薩南諸島(さつなんしょとう)
   南西諸島のうち、北は種子島から南は与論島までの
   鹿児島県に属する部分の島々を指す総称。
※3 島嶼:(とうしょ)
   大小さまざまな島のこと。

トカラ列島の主な島は、
・口之島
・中之島
・臥蛇島(無人島)
・小臥蛇島(無人島)
・平島
・諏訪之瀬島
・悪石島
・小島(無人島)
・小宝島
・宝島
・上ノ根島(無人島)
・横当島(無人島)
いずれも火山島からなる、有人7島、無人5島。

小生が専ら飼育しているのは『悪石島産』のトカラノコです。
悪石島は周囲の殆どが険しい崖で囲まれています。
2004年3月31日現在、人口は72人、世帯数は32世帯
鹿児島本港南埠頭から「フェリーとしま」(※4)で11時間、
「やすら浜港」に寄港します。現在、運航は週2便のみ・・・。

※4 「フェリーとしま」
   九州とトカラ列島の島々を結ぶ唯一の公共交通機関です。(十島村営)
   鹿児島港(鹿児島市)からトカラ列島の各島を経由し、
   奄美大島の名瀬港(奄美市)を結びます。
   たった一隻の村営フェリー「としま」が鹿児島と奄美大島の間の
   島々を週2回往復するだけです。
   十島村は小島嶼が連なっており島同士の交通も不便であるため、
   村役場は村内ではなく鹿児島港のすぐそばに設置されています。

言葉の羅列ばかりで、前置きが長すぎました。
ややこしい説明を無視して、これを見てください。⇒
具体的な場所が判ると思います。

------ここから

トカラノコギリクワガタについて
本土(本州、九州、四国)に生息するノコギリクワガタよりも
顎の湾曲がやや緩やかで、内歯の出現パターンが異なります。
頭楯にも特徴があり、本土ノコはスコップ状、これ対してトカラは上に剃り
先端が少しフタマタに分枝します。
体色は独特の褐色(擬似オレンジ)を呈し、上翅には艶があります。
初めて見たとき、なんとも言えない綺麗な色調に感激しました。
極稀に褐色でなく、黒化型が出現しますが、
本土生息のノコギリで見られるような赤色味はありません。
学名の elegans は「優美な」という意味です。

トカラ列島の各島毎に固有の特徴があるようです。詳細は存じません。
(ぱっとみて解るような顕著な特徴でなく微細?な特徴です。)
大きな個体と綺麗なオレンジ色を求めるなら中ノ島産だ!
という印象しかありません。
しかし、全ての島で、平成16年6月22日から
十島村昆虫保護条例により採集禁止になっています。
よって、市場流通品は全てブリード品になります。
繁殖がとても簡単なので、流通が絶えないこと、
飼育してみれば実感できると思います。
ただ、極一部でWD品が・・・、と聞いたこともあります。(詳細不明)
産地は何故か「悪石島」産が大半で、正真正銘の中ノ島産の流通は
見た事がないというか、あっても肩書き、疑わしいような気がします?
小型の♂は体全体が綺麗なオレンジを呈し、
大きく成るにつれて黒色の面積割合(※5)が増えるように感じます。
私の飼育環境では約70匹に1~2匹の割合で黒化型が出現しています。→ 私の経験上、黒化型=完全黒でなく、極僅かな赤混ざりの色調が
多いと思います。♀の黒化型は上翅の模様、縞、凹凸(ザラザラ)の有無で
他種と判別できますが、♂は一見して、アマミノコギリと区別が付き難いので
厳重に管理すべきだと思います。

※5 黒色の面積割合
   小生の独断にすぎません。
   小楯板と上翅会合線付近の黒い線の幅、前胸背板の中央部、
   頭部の左右から前胸背板隣接部、これらの黒い暈し面積は
   ♂サイズが大きくなるにつれて増えるように感じます。
   70mm程度でもこれらの黒割合が少ないのなら
   本当のオレンジ美色(標本に見る中ノ島産)だと思います。

日本のノコギリクワガタを繁殖するための定石?
小生の場合、必ず羽化後なるべく低温で管理して越冬させます。
春先や初夏早々に羽化した個体、特に♀などは、羽化年に活動(後食)
することがありますが、なるべくそうなる事を避けます。
繁殖は、必ず羽化年の翌年に行い、それまで越冬保管させます。
なぜか、その理由は
過去に、越冬をさせずに累代を試みて失敗したことがあるからです。
そのときの成績は1♂、2♀から、たった5匹の幼虫しか得られず、
♀は産卵しましたが、未熟卵のため、殆んど直ぐに腐敗して孵化率が悪く
当然、産卵数も少なかった記憶があります。
♂の行動は明確でなく、数日間マットの中に潜り、たまに夜中の活動を
観察したかと思えば、次の日からまた長期間潜ったままで・・・。
結局、中途半端な行動を繰り返した後、他界してしまいました。
羽化して温かい環境で保管すると数ヶ月に活動することがあります。
人によっては羽化年に交配(越冬させず)して繁殖される方もおられます。
越冬なしでの繁殖も可能で、たくさん増えることもありますが、
『確実にたくさん増やす』には、翌年まで我慢すべきだと思います。
早期活動の個体は、♀の突然死、♂無精、未熟卵、産卵減少傾向など
いろいろな経験を(トカラノコ以外でも)しています。
日本の南方の島々に生息するクワガタでも本州に生息する種と同じく、
真冬の寒さを経験させるべきでしょう。奄美大島のスジブトヒラタも同じで、
暖かい状態をたもてば、越冬しないが、中途半端な後食行動をして、
もちろん♀はあまり産卵しない傾向です。これは、身近なコクワガタ、
オオクワガタなどでも同じです。

産卵
本種に関してはマット産卵主体です。極普通の発酵マットでOKです。
完全に成熟した(越冬した)個体では失敗経験は殆どありません。
交尾させて直ぐに産卵します。
必ず容器側面に卵が観測できますので、交尾、産卵容器投入で
2週間以上経過しても観察できないときは、要注意です。
失敗と成功、これほど顕著に判断できるクワガタはいません。
産卵マットから卵や幼虫を割り出すか、適度に産卵マットを交換すれば
さらに多くの産卵(繁殖)が期待できます。
♂の♀に対する気性は意外と穏やかで、一緒に入れても挟み殺しの発生は
他のミヤマ、ヒアラタなどに比べて断然少ないです。
(私は用心深く♂の顎を縛ります。♂同士では喧嘩しまくります。2ペア同居は禁止。)
産卵数は♀1匹で30~70匹、大抵は♀1匹で40匹以上、簡単に増えます。

幼虫飼育~羽化
産卵と同じく、マット飼育が基本だと思います。
菌糸飼育も可能ですが、菌糸は顎の湾曲が緩やかな♂が
羽化したり、頭幅の小さい♂(お尻は大)が羽化したり・・・・
体型が不細工になり易い傾向を感じます。
本種を菌糸で飼育すると栄養多過で、幼虫が大きく育っても、
人間に例えればメタボ体型に育つのかも知れません。
私の場合、某有名店の安価なマット、1100cc(途中1回交換)で
68mm前後の♂、♀は38mm前後が簡単に羽化しています。
毎年、羽化までのスケジュールは・・・
夏頃にセットを割り出します(複数回)。割り出した幼虫または卵を
適度な容器に入れて、しばらく混合飼育、または 幼虫が大きければ
そのときの気分で550cc程の容器に入れて単独飼育します。
大抵は混合飼育をします。約1、2ヶ月後、秋頃に1100ccへ交換
させて放置します。翌年、春先前の2~3月頃にもう1回交換します。
(♀は1100ccでなく、800ccでも良いと思います。)
後はそのまま放置して夏~秋に羽化、1年1化のサイクルで2年1化は居ません。
♂と♀の羽化ズレもありません。幼虫飼育でもっとも大切な事は、
幼虫に四季の温度変化を体感させること。真冬は最低だと5℃、
夏は28℃以上(時として30℃+α、それでも死にません)で管理しています。
驚くほどの耐暑性があります。耐寒性は氷点下を避ければ大丈夫です。
そうすれば、毎年必ず、夏~秋に羽化します。

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